5バルブ
エンジンまたはシリンダーヘッドのタイプの一種。高回転時の吸排気効率を上げるためには、バルブ面積を広くするのが効果的で、高出力エンジンでは4バルブが一般的になっているが、それをさらにすすめた形態。吸気バルブを3つ設置し(排気バルブは2つ)、1気筒あたり計5バルブとしたものだ。ミツビシやフェラーリもやっているが、ヤマハのもの(2輪車用やF1用エンジンを含む)が有名。走り屋の話題によくあがるのは、AE101/111型のレビン/トレノに搭載された4A-Gエンジンの5バルブヘッドだが、これもヤマハの技術によるものだ。
GOA [Global Outstanding Assessment]
トヨタが採用している衝突安全性能の高いボディの名称。「クラス世界トップレベルを追求している安全性評価」という意味らしい。最新の欧米の安全基準を踏まえて、より厳しい独自の性能目標を設定し、その基準をクリアしたボディのこと。客室部分を強く固くつくって乗員の生存空間は確保する。そのいっぽうで客室の前後は変形しやすい構造にすることで、衝突時の衝撃を吸収する。
KERS(運動エネルギー回生システム)
KERSの機能
来年はバッテリーとフライホイールという2種類のKERSシステムが使用されると予想されている。
バッテリー・システムの方が人気の高い方法のようである。これはスーパーキャパシタ・バッテリーに制動エネルギーを保存して、必要なときにホイールの駆動力として放出する。
フライホイール方法は、ウィリアムズ(およびおそらくホンダ、トヨタ)が採用するようだ。この場合、制動エネルギーはフライホイールを回転させるために利用され、追加の馬力が必要になると、ホイールは回転するフライホイールと組み合わされて出力が増加する。
規約は1周あたりのKERSシステムの出力を60kW(約80馬力)まで、エネルギーの保存量を400kJまでに制限している。つまり、1周当たり6.7秒間に渡って80馬力を追加できるということである。
このアイデアは、F1に環境技術の開発を強いるだけでなく、オーバーテイクも増加させる。追い上げているドライバーは、先行マシンに追いついたときにKERSを利用して、加速のブーストを得ることができる。
もちろん追われているドライバーも防衛のために同時にKERS装置を使うことができる。したがって追い上げているドライバーの馬力面でのアドバンテージは相殺される。
しかし追加エネルギーの保存が制限されているので、ドライバーはこの装置の利用法に関してはかなり戦術的にならなければならない。
エネルギーを一旦利用すると回復するまでに時間がかかるので、トラックの重要なポイントに到達したときに保存されたエネルギーを使い果たし、後続マシンにまだエネルギーが残っている場合もあり得る。
原則として、これはF1に興味深い新局面をもたらす。しかしまず克服するべき多くの困難があり、チームが来シーズンの開幕戦までに装置を用意できるかどうかは不明である。
KERSの使用は義務付けられてはいないので、一部のチームは少なくとも2009年の開幕時には搭載しない模様である。
難問
バッテリータイプのKERS装置は、トヨタ・プリウスなどのハイブリッド乗用車に利用されているが、F1の用途で要求されるこの技術はかなり違ったものになるだろう。
ハイブリッドカーのバッテリーは、車両の寿命と同程度の耐久性がなければならない。
F1では、バッテリーは一定の出力についてできるだけ小型かつ軽量である必要があり、技術的には「最先端」であるので、長くても1回のレース週末だけ耐久すればよいだろう。
BMWのマリオ・タイセンは、F1用装置の出力-重量比は、同社のハイブリッド乗用車に使用されている装置に比べ、3~4倍であると指摘している。
バッテリーの漏電火事および感電という安全上の問題がある。
マシンが電気エネルギーを保存したままピットガレージに戻ってくると、チームはそのエネルギーをマシンから保存装置に放出させる装置を必要とするだろう。
つまり、トラック上でマシンが動かなくなった場合に備え、マーシャル・ポストも同様の装置を利用する手段が必要になるだろう。
リチウム・バッテリーには化学物質が使用されているので、バッテリーの爆発は、ドライバーやクルーだけでなく、近くにいる人全員にとって危険である。
チームは、事故があっても危険がないような方法でバッテリーあるいはフライホイールを設置できると考えているが、トラックでの使用が認められる前に各設計について標準的なFIAクラッシュテストに組み込む必要があるだろう。
効果
今までのところ、パフォーマンス上のメリットは絶大ではないと見られている。
わずか7秒足らずの間に80bhpが追加された場合、数字的なメリットはラップタイムにして約0.3秒になるだろう。しかし、このタイム短縮から、最適とは言えない重量配分の効果を差し引かれなければならない。
バッテリーと付属部品を含めたこの装置の重量は、約35kgになるだろう。
チームは現在、約60~70kgのバラストを使用しており、特定のトラックにおけるマシンの動力学に最適となる場所に配置されている。しかしどこに配置するにしても、重心をできるだけ低く維持するために、バラストは非常に低い場所に配置される。
現在のバラストの約半分がKERS装置にとられることになるので、重心の高さは上昇し、ホイールベースの範囲内で設置できるバラスト位置の柔軟性が制限される。
また、この装置が飽和してそれ以上の制動エネルギーを受け入れられなくなると、後車軸のトルク効果に潜在的問題がある。軸重の段階的変化により、ブレーキング中のマシンが不安定になる可能性がある。
現在の計画では、装置の出力・保存容量は今後のシーズンで徐々に増量することになっている。2011年には100kwおよび800kJに飛躍し、2013年には後車軸だけでなく両車軸から200kwおよび1,600kJを認める予定である。
しかし当然のことながら、第一世代の装置を安全に利用できるようになるまでには非常に多くの作業が必要である。
カウンター[カウンターステア]
コーナリング中にオーバーステアが出たとき、スピンせずにねらったラインを通るためには、ステアリングをコーナーとは逆方向に切らないといけない。これをカウンターという。とうぜんフロントタイヤもコーナーの曲がりとは反対の方向に切れる。カウンターを当てるのが遅れるとスピンしてしまう。
カウンター[カウンターステア]
コーナリング中にオーバーステアが出たとき、スピンせずにねらったラインを通るためには、ステアリングをコーナーとは逆方向に切らないといけない。これをカウンターという。とうぜんフロントタイヤもコーナーの曲がりとは反対の方向に切れる。カウンターを当てるのが遅れるとスピンしてしまう。
カットオフスイッチ
おもに競技車両のための装備で、クラッシュなどの緊急時に電気系統を切るためのスイッチ。ドライバーの手が届くところと、車外とに装着することが多い。たいていは赤いT字状のハンドルで、近くには目印となる稲妻のようなマークのステッカーが貼られる。ニスモがこのカットオフスイッチそっくりのシガーライターを発売して大人気となったことがある。
カットオフスイッチ
おもに競技車両のための装備で、クラッシュなどの緊急時に電気系統を切るためのスイッチ。ドライバーの手が届くところと、車外とに装着することが多い。たいていは赤いT字状のハンドルで、近くには目印となる稲妻のようなマークのステッカーが貼られる。ニスモがこのカットオフスイッチそっくりのシガーライターを発売して大人気となったことがある。
カナード
フロントバンパーの左右に付ける、エラのような空力パーツで三角形のものが多い。ダウンフォースを発生させて、フロントを路面に押しつける働きをする。ただし、空気抵抗は確実に増える。もともとはレースでよく使われているパーツ。
カブる
スパークプラグの電極にガソリンやオイルが付着して湿ってしまうこと。正常な点火ができなくなり、エンジンが始動できなくなったり、停止してしまったりする。原因はいろいろあるが、始動を失敗しただけなら、プラグを乾かせば解決する場合もある。そのほかの原因としては、燃調が濃すぎたり、オイルが上がっているなどの可能性がある。その場合は燃料の再調整やエンジンのオーバーホールなどが必要になる。
カプラー
配線や配管などを簡単に接続させたりはずしたりできる連結器のこと。クルマでよく使われるのが電気系の配線で、パーツを付けたりはずしたりするときに、いちいちハンダづけなどが必要ないように、いくつかの配線をひとまとめにしてワンタッチで接続させることができるようになっている。
カム [カムシャフト]
いろいろなタイプがあるが、クルマに使われているなかでいちばん有名なのは、エンジンのカムシャフト。特殊な形の断面を持つ円筒で、それが回転することで、エンジンのバルブを押し下げる。バルブが開閉するタイミング、開く量を決める重要なパーツで、エンジン特性を大きく左右する。NA車の場合は、ふつう高回転型のパワー特性にするために交換するが、ターボ車の場合は、低回転域からブースト圧がかかるようになるカムシャフトも多い。こういったカムシャフトのことを、一般的にハイカムと呼ぶ。
カムスプロケット
歯車どうしで組み合わされるのではなく、チェーンやベルトと組み合わされるタイプの歯車。クルマでは、タイミングベルトやタイミングチェーンでカム(カムシャフト)を駆動するためのカムスプロケを指すことが多い。このカムスプロケを調整式のものと交換すると、バルタイ(バルブタイミング)の調整ができるようになり、パワー特性を変えることができる。
カムプロフィール [カムシャフトプロフィール]
カム(カムシャフト)のカム山断面の形。おおざっぱにいうとタマゴ型をしている。この形によって、バルブが、いつからいつまで開くのか、何mmリフトするのか、ゆっくり開くのか急に開くのか、ゆっくり閉じるのか急に閉じるのかなどが決まる。エンジンのパワー特性を決定する非常に重要な要素になる。
カムプーリー
歯車どうしで組み合わされるのではなく、チェーンやベルトと組み合わされるタイプの歯車。クルマでは、タイミングベルトやタイミングチェーンでカム(カムシャフト)を駆動するためのカムプーリーを指すことが多い。このカムプーリーを調整式のものと交換すると、バルタイ(バルブタイミング)の調整ができるようになり、パワー特性を変えることができる。
カーボン
炭素という意味だけど、クルマ業界では、だいたい炭素繊維で強化したプラスチック(CFRP)のことをいう。エアロパーツによく使われる素材で、ウェットカーボンとドライカーボンがあるけど機能的に優れているのはドライカーボン。ドライカーボンは超軽量で強度の高いものが作れる。また、クラッチディスクやブレーキローターなどの摩擦材として使われるカーボンは、C/Cコンポジットというもので、ドライカーボンをさらに繰り返し焼いて、完全に炭にしたようなものだ。
ガスケット
部品の継ぎ目などにはさんで、液体や気体が漏れるのを防ぐパーツ。たいてい、あるていどつぶれることで気密性を保つようにできている。マフラーの継ぎ目、エキマニとエンジンとのあいだ、シリンダーヘッドとシリンダーブロックのあいだなど、いろいろなところに使われていて、形もいろいろなものがある。シリンダーヘッドに使われるガスケットは、ヘッドガスケットといって、チューニングの際によく交換される。ハイブーストをかける場合には、それに耐えられる強度の高いメタルヘッドガスケットに交換する。また、厚みのちがうヘッドガスケットに換えることで、圧縮比を調整することもできる。
ガセット補強
フレームやロールケージで、パイプとパイプ、パイプとパネルをつなぐ部分などに、小さいパーツを付け足して補強を入れてやること。たとえば、直角に溶接されているパイプとパイプの間に三角形の板を溶接してやることで、より頑丈にしてやることなどをいう。ガセットは、三角形だったり、長い板だったり、ハコ状だったりと、いろいろなものがあって、特に形は決まっていない。
ガルウイング
ガルウイングというのは、カモメの翼という意味で、厳密にはルーフにヒンジがあって、上に開くドアのことをいう。AZ-1や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てきたデロリアンなどがそうだ。ただ、一般には前にヒンジがあっても上に開くドアはガルウイングという。カウンタックなどがそうだ。アフターマーケットでは、横に開く通常のドアを、上に開くように改造するキットも発売されている。
ガーニッシュ
飾りのこと。機能的には関係がないドレスアップパーツによく付けられる名称。テールランプの周辺やヘッドライトのアイライン、サイドステップにつけるパーツなどには、よくガーニッシュという名前が使われる。どうでもいいが、語源は古いフランス語らしい。
ガーニーフラップ
ウイングの後端をフチ取るように付ける、高さ1cmていど(決まっているわけではない)のレースでよく使われる空力パーツ。一見チンケに見えるけど、確実にダウンフォースを向上させるが空気抵抗は増える。ウイングを立てるかガーニーフラップを付けるか、どちらがいいかはケースバイケースらしい。
キャスター
タイヤが接地しているときの向きを決めるアライメント要素のひとつ。キャスターは操舵軸の傾きで、自転車やバイクでいうと、フロントフォークの傾きのことをいう。直進性や、コーナーでハンドルを切ったときの接地性に影響がある。ノーマル車ではまず調整できないので、調整したければ、社外のパーツを装着する必要がある。ただしサスペンション形式によって調整できないクルマもある。
キャタライザー
触媒のこと。排気ガス中の有害成分を減らす装置で、フロントパイプやマフラーの途中に付いている装置。キャタライザーを排気ガスが通ると、化学反応が起きて、有害成分が害のない成分に変わる。内部小はさい無数の蜂の巣状の穴を持つ構造で、排気抵抗は大きい。自動車には装着が義務づけられているので、取りはずすだけで違反になる。
キャッチタンク [オイルキャッチタンク]
エンジンから出るブローバイガスは、ノーマル車ではそのままインテークパイプに戻される。でも、ブローバイガスに混ざったオイルがいろいろ悪影響をおよぼすのを防ぎたい場合、配管の途中にタンクを設置し、オイルを分離させて回収する。このタンクをキャッチタンクという。キャッチタンクを通過したガスは、レーシングカーなどでは大気に開放するが、車検に通すにはインテークパイプに戻す必要がある。
キャニスター [チャコール・キャニスター]
燃料タンク内で蒸発したガソリンが、そのままやたらと外に出ていかないようにするための装置。エンジンが止まっているときは気化したガソリンを活性炭に吸着させる。エンジンが稼働すると、そこに新気を通して、吸着したガソリンを吸気管に吸い込むようなつくりになっている。
キャビテーション
液体の中を物体が高速で移動したときに、部分的に圧力が低下し気泡が発生する現象のひとつ。ダンパー(ショック)のオリフィスや、冷却水を循環するウォーターポンプなどで発生する。冷却水を例にあげると、ウォーターポンプが高回転で回転したときに、圧力が低くなったところの冷却水が気化して泡が発生することをいう。キャビテーション回避策として、プーリーを大径化してポンプの回転速度を落とす方法などがある。
キャブ[キャブレター]
インジェクションが普及する前の燃料供給装置。吸気管内の負圧を利用して、燃料を吸い出すシステムだ。基本的に電子制御を必要としないので、プライベーターでもいじりやすい。それもあって、いまでもハチロクのチューングカーなどにはよく使われる。FCRや、ウェーバー、ソレックスというのはキャブのブランド名だ。
キャブターボ
キャブのターボエンジン自体や、そのチューニングのこと。またはキャブのエンジンにタービンをボルトオン装着したチューニングのこと。インジェクションのような細かい燃調セッティングができないので難しい。過去には存在したが、現在はキャブのクルマ自体が少ないこともあり、ほとんど存在しない。
キャンバー
アライメント要素のひとつ。前から見て、タイヤが「ハ」の字になっているかどうかを示す数字だ。「ハ」の字ならばネガキャン(ネガティブキャンバー)、逆「ハ」の字ならばポジキャン(ポジティブキャンバー)という。コーナリング時のタイヤの接地性に影響が大きい。ちなみに強烈なネガキャンがついていることを「鬼キャン」という。
キングピン角
キングピンというのはフロントの操舵軸のこと。クルマを正面から見たときに、キングピンは垂直ではなく、たいてい傾いている。その傾きの角度のことをキングピン角と呼ぶ。キングピン傾斜角は操舵力やステアリングを切ったあとの復元力などを左右する要素になっている。調整式サスペンションアームの長さを変えたり、ストラット式のサスペンションでキャンバーを変えたりすると、キングピン角も変わることがある。
ギボシ [ギボシ端子]
電気系の配線を接続するための端子の一種。配線の先端に圧着して使用する。電工ペンチがあれば、手軽に取り付けができる。また、ギボシでつないだ配線は、工具を使わずに簡単に抜き差しできる。もともとギボシというのは「擬宝珠」(「ぎぼうしゅ」とも読む)と書き、橋の欄干の上などにつけるタマネギ型の装飾のことや、ネギの花のことを指す。その擬宝珠にカタチが似ていることから、ギボシ端子と呼ばれるようになったと推測されるが詳細は不明。
クラッチ
エンジンの回転をトランスミッションに伝えたり切ったりする装置。パワーを上げたり、ゼロヨンスタートやクラッチ蹴りなど苛酷な使いかたをすると、ノーマルでは耐えられなくなって滑ってしまうことがある。滑るとエンジンがカラまわりするような状態になって、アクセルを踏んでもクルマが進まなくなる。対策としては、社外の強化クラッチに交換する。シングル(シングルプレート)の強化タイプのほか、クラッチディスクの枚数を増やしたツインプレート、トリプルプレートなどの種類がある。
クラッチ蹴り
アクセルを踏み続けたまま、クラッチペダルを踏んで、また急激につなげる操作のこと。ドリフトのきっかけづくりや、ドリフトの維持、パワーバンドをはずれたときの回復やストールの防止などに使われるテクニックだ。操作は一瞬だがクラッチの負担は大きい。
クランキング
エンジンは、電気と燃料が供給されている状態でクランクシャフトをまわすことで始動する。そのクランクシャフトをまわす作業のことをクランキングという。ふつうはセルモーターを使って電力でクランキングする。MT車の場合は、バッテリーが上がったときにも、押しがけという方法でクランキングすることができる。
クランクシャフト
レシプロエンジンの内部パーツで、いちばん大きい部品。コンロッドの大端部が取り付けられ、ピストンの上下運動を回転運動に変える役目を果たしている。1気筒ごとに重量バランスをとっているフルカウンタータイプと、複数の気筒でまとめてバランスをとっているセミカウンタータイプがある。フルカウンタータイプのほうが、変形や振動が少なく、耐久性が高まるが、重量は重くなり、理論上レスポンスは悪くなる。
クランク角
ピストンの上死点(TDC)を基準(0度)として、クランクシャフトがそこから何度ぶんまわっているかを表す言葉。上死点前(BTDC)何度、上死点後(ATDC)何度という表しかたをすることが多い。現代のクルマでは、クランク角センサーで検知したクランク角の情報をもとに、エンジンコンピューターが点火タイミングを判断して、点火プラグに火花を飛ばさせている。
クリープ現象
トルクコンバーターを使ったAT車でチェンジレバーをDレンジに入れておくと、アクセルを踏まなくても、クルマはゆっくり動いてしまう。この現象をクリープ現象と呼ぶ。機構上しかたがないことなのだが、慣れると便利な面もある。そこで、本来クリープ現象が起こらないCVT車でもクリープ現象をわざと起こすように作られているものも多い。ちなみにクリープ(creep)というのは、「はう」という意味の英語。コーヒーに入れるクリープ(creap)とはスペルが異なる。コーヒーに入れるクリープ(森永)は『クリーミング・パウダー』に由来する造語だと思われる。
クロカン[クロカン四輪駆動]
クロカンというのはクロスカントリーの略。ランドクルーザー、サファリ、パジェロなど、最低地上高を大きくとって外径の大きいタイヤを履き、悪路での走破性を重視したタイプの4WD車のことをいう。したがって、インプレッサやランサーの4WDは、クロカン四輪駆動ではない。
クロスハッチ
エンジンのシリンダーに、ホーニングを行ったあとで残る斜めの網目状の細かい傷跡のこと。これは残ってしまうのではなくて、わざと残している。シリンダー内壁に適度な凹凸を持たせることで、油膜を保持しやすくするためだ
クロスフロー
エンジンのバルブレイアウトの一種。吸気バルブと排気バルブが向かい合わせで並んでいるタイプ。吸い込まれた空気はシリンダーを横断して排出されることになる。2バルブでも4バルブでも、SOHCでもDOHCでも可能なレイアウトだ。バルブ面積を大きくしやすく、空気の流れもスムーズなので高回転高出力化にも有利。そのため現在のエンジンの主流になっている。なおSOHCの場合、過去にはターンフローというタイプも存在したが、DOHCの場合は基本的にクロスフローしかない。
クロスポート
ロータリーエンジンの吸気ポートの種類のひとつ。サイドポートとペリフェラルポートを両方とも使用する。そのため、合計した吸気ポートのサイズは、ほかのどのタイプのポート形状よりもデカくなり、T51やT88クラスのビッグタービンを組み合わせてやると700psから800psという大パワーを発生させることも可能になる。あんがい中回転域からトルクを出すことも可能だが、ハウジングのペリ加工や専用マニホールドの製作が必要になることから、一般に普及はしていない。
クロスミッション
各ギヤのギヤ比が近い設定になっているトランスミッションをクロスミッションという。各ギヤのギヤ比が近いと、シフトアップをしたときに回転の落ち込みが少なくなるので、パワーバンドからはずれにくくなる。ふつうの5速ミッションだと、4速は直結になるのでギヤ比を変えられない。そこで、1、2、3速を4速に近づけたり、さらに5速も4速に近づけたりしてクロス化される。
クロモリ [クロームモリブデン鋼]
スチール(鉄)の親戚である合金鋼の一種。鋼にマンガン、クロム、モリブデンなどが添加されている。溶接しやすく、靱性も高い。ギヤやアーム類などいろいろな場所に使われているが、軽量フライホイールの材料として特に有名。
クローズイン
エンジンのコンロッド(コネクティングロッド)に起こる現象。コンロッドがピストンに押されたり引っ張られたりすることで、クランクシャフトに接続されている大端部が歪んでしまうことを言う。本来ほぼ正円であるはずの穴が横長になったり、縦長になったりしてしまう。エンジンチューンで爆発力が上がったり高回転化したりすると起こりやすく、メタル損傷の原因になる。
クローズドデッキ
エンジンのシリンダーブロック(ブロック)の構造の一種。ブロック上面に開いている水穴が、ウォータージャケットよりも小さくなっているタイプのブロックのことをいう。作りかたが複雑になるのでコストはかかるが、ブロック剛性は高くなる。このクローズドデッキのほかにオープンデッキという構造もある。
クーペ
クルマのボディ形状のひとつ。ふつうは2ドアで、客室が小さく、屋根が低く、スポーティなスタイルの乗用車のこと。シルビアやフェアレディZ、RX-7、V35などがクーペ。ランサーやチェイサーはクーペではない。ちなみに、もとはフランス語。
クーラント [ロングライフクーラント]
エンジンを冷却する冷却液のこと。LLCや不凍液とも呼ばれる。ふつうは濃い原液を真水で薄めて使う。真水をそのまま使うのに比べて、凍結しにくく防錆作用もある。赤いものと緑のものとがあって、自動車メーカーによってどちらかにわかれる
クーリングチャンネル
ターボ車の純正ピストンなどに採用されている構造で、ピストン内部に開けられたドーナツ型の空洞のこと。下側のオイルジェットからオイルが吹き込むようになっている。そうすることでピストントップを冷ます。ただし鍛造では一体成型できないので、ほとんどの鍛造ピストンには採用されていない。鍛造で製作する場合には、特殊な溶接でつなげた2ピースの構造になる。
グラウンドエフェクト
ダウンフォースを生みだす空力パーツを地面に近い位置で使うと、ダウンフォースがより大きくなる。その効果のことをグラウンドエフェクトという。つまり、ボディの上のほうについているウイングよりも、ボディのフロア下の形状を工夫してダウンフォースを発生させたほうが、より効率がいいというわけ。フロントアンダーパネルや、リヤのディフューザーは、このグラウンドエフェクトを利用しようとしている空力パーツだ。
グリップ
いろいろな使われかたをするけど、タイヤが路面をとらえること(または力)を指すことが多い。また、タイヤを滑らせるドリフト走行に対して、タイヤを滑らせないで速さを追求する走りかたを「グリップ走行」と呼ぶ。工具などの手で握る部分のこともグリップと呼ぶ。
グロス[グロス値]
エンジン出力の測定方法のひとつ。グロス値は昔使われていた表示方法で、エンジン単体で計測されたもの。現在のノーマル車の 馬力 はネット値で表されている。ネット値というのは、エンジンを車両に搭載した状態とほぼ同条件で測定したエンジン出力になる。ちなみに、ハチロク(AE86)の時代のカタログデータはグロス値で表示されていた。
グロメット
水や外気、騒音などを遮断するためにボディパネルの小さい穴をふさぐフタ。またはボディパネルの穴に配線などを通す際に、金属の穴のエッジから配線を保護するために装着する環。たいていゴムなどでできていて、グイグイ引っ張るととれる。後付けメーターや電子パーツなどの配線を引く際には、グロメットの部分を通すと便利だったりする。
コア
もともと『芯』とか『核』といった意味のことばだが、チューニングパーツに関して言うときには、インタークーラーやラジエターの主要部分である、熱交換を行う部分のことを指すことが多い。たいてい薄い波板状のフィンと、空気や水などが通るチューブを組み合わせてできている。キットもののインタークーラーやラジエターは、コアにサイドタンクが組み合わされた状態で販売されているが、汎用のコアというものも売っていて、好みの形状のサイドタンクを組み合わせたり、サイドタンクをワンオフ製作して組み合わせることもできる。それによって車種や仕様に合ったインタークーラーやラジエターのキットが製作できる。
コアサポート [ラジエターコアサポート]
クルマのフレームのいちばん前の部分で左右をつなげている骨組みのこと。文字どおりラジエターを支えているほか、ヘッドライトや前置きインタークーラーもこの部分で支える。以前はスチールで作られていたが、フロントのオーバーハングを軽くして回頭性を改善するために、最近のクルマでは樹脂製のものも出てきた。
コイル [イグニッションコイル]
棒状の材料を円筒形に巻いたもの。クルマでただ「コイル」という場合には、イグニッションコイルを指すことが多い。導線を円筒形に巻いたパーツで、エンジンの点火プラグに火花を飛ばすために高電圧を発生させる装置だ。電流を瞬間的に流したり切ったりすると、電磁誘導によって、高電圧を発生させる。
コレクタータンク
大きい燃料タンク(ノーマルタンク)で燃料が残りわずかになると、コーナリング中に燃料が片よって吸えなくなり、ガス欠症状を起こしてしまうことがある。そこで、大きい燃料タンクからいったん小さいタンクに燃料をためておき、そこからエンジンに送るようにすれば、ガス欠症状が起こらない。そのための小さいタンクをコレクタータンクという。だから、コレクタータンクは上下に細長い形をしている。サーキットマシンによく使われる。
コンデンサー
チューニング業界でいう場合は、だいたいエアコンのコンデンサーのこと。冷媒を冷やすためのパーツで、たいていラジエターの前に付いている。形もラジエターの薄っぺらいみたいなヤツだ。覚悟がある走り屋は取っ払ってしまう。取りはずすともちろんエアコンが使えなくなるが、オーバーハングが軽くなるし、ラジエターの冷えもよくなる。
コンプレッサー
圧縮する装置のこと。クルマの場合は、空気を圧縮する装置を指すことが多い。たとえば、ターボ(ターボチャージャー)は排気の力を利用して吸気を圧縮する装置だが、排気側の部分(排気によってまわされる部分)をタービンと呼び、吸気側の部分(タービンの回転力で吸気を圧縮する部分)をコンプレッサーと呼ぶ。機械式スーパーチャージャーの場合は、プーリーで直接コンプレッサーを駆動することになる。ターボチャージャーに使われている遠心式や、エアコンに多いスクロール式など、いろいろなタイプがある。
コンロッド[コネクティングロッド]
エンジン内部で、ピストンとクランク(クランクシャフト)をつなぎ、ピストンの直線運動をクランクの回転運動に変えている部品。パワーを上げると純正では耐えられなくなってくるので、社外のパーツに交換する。I断面のものとH断面のものとがあるが、どちらが優れているとは一概にはいえないようだ。
コーキング
液体やガスが漏れないように、パーツの合わせめの隙間をうめること。またはうめるための充填剤のこと。役目としてはパッキンと同じだが、すでに成型されたものではなく、歯磨き粉のように「ニューッ」と出して固めるものをコーキングと呼ぶことが多い。ゴムなど適度に弾力のある材料が使われる。
コーナーウエイト
4輪の各タイヤにかかっている重さのこと。コーナーウエイトゲージという4つの体重計がセットになったような器具に、4つのタイヤを載せて計測する。コーナーウエイトはできるだけ均等になっていることが望ましいが、前後の重量配分は、根本的な問題も大きいので、特に左右のコーナーウエイトが近づくように調整する。車高調で車高を変えたり、搭載しているものの配置を変えてコーナーウエイトを調整する。
コーナーリングフォース
走っているクルマを曲げるのに必要な横方向の力をコーナリングフォースという。細かく見ると、タイヤをどちらかに切った場合、クルマの進行方向とタイヤの向きにズレが生じる。このときに生じる、進行方向に対して直角の方向の力がコーナリングフォースだ。この力のおかげでタイヤは横方向に曲がっていき、そのタイヤにのっかっているクルマも横方向に曲がっていくことになる。
ゴマメ
クルマをクラッシュさせることを俗に「ゴマメる」という。これは『OPTION』に連載されていたクラッシュ写真の投稿ページ、「ゴマメ図鑑」に由来する言葉だ。その語源は「ゴマメの歯ぎしり」(無力な者がいくら憤慨してもなんの足しにもならないこと)。事故ったからって、悔しがったり悲しんだりしても始まらない、ということで、事故ることを「ゴマメる」と呼ぶようになったのだ。
切れ角
ステアリングをめいっぱいまわしたときの、前輪が切れる角度のことをいう。レーシングカーではあまり必要ないが、ドリフトマシンでは、切れ角が大きいほどスピンしづらくなるので、チューニングによって増やすことも多い。切れ角アップチューニングは、ナックルアームの加工や、タイロッドの加工など、いくつかの方法がある。現在では、ドリフトマシンの定番チューンになっている。
剛性
モノの性質のうち、力を加えても変形しにくい性質のこと。クルマの中で特にいわれるのが サスペンション 取りつけ部とボディの剛性。サスペンションの取りつけ部をゴムブッシュからピロボールに替えると、剛性が上がってレスポンスがよくなる。またタワーバーやロアアームバー、ロールケージなどでボディを補強してやると、剛性が上がって、動きがシャキッとするなどのメリットがある。
小卍
ドリフトの技のひとつ。直線などで、卍(マンジ)を細かく繰り返すこと。特に難度が高いわけでもなく、スピードが乗るわけでもないので、ドリフト競技ではまず行われず、遊びとして行われるくらいである。というより、「こまんじ」という音の響きが面白いために、この技が行われることも多い。
慣性ドリフト
ドリフトのやりかたの一種。基本的にはオーバースピードでコーナーに入っていく勢い(慣性)だけで、テールを流すドリフト。ただコーナー手前からテールを振り出すためには、多少のアクセルOFFやフェイントはきっかけづくりに使うと考えていい。車速が高くないとできないこともあって、ドリフトのなかでも最も難度が高い部類に入る。
機械式LSD
チューニングカーやレーシングカーでよく使われるLSDの一種。多板クラッチを内蔵していて、左右輪にかかるトルクに差が出ると、内側のプレッシャープレートが、多板クラッチを押しつけることによって、左右輪の回転の差を抑える働きをする。効き方にはややクセがあるが、効きの強さの調整ができ、調整幅も広いので、チューニングカーやレーシングカーでよく使われる。また、アクセルON時のみLSDが作動する1way、ON・OFF時常に作動している2way、1wayと2wayの中間にある1.5wayと、効き方のちがう3タイプの機械式LSDが設定されている。
混合気
空気と燃料が混ざった気体のこと。エンジンに吸い込まれた空気に燃料が噴射されてから燃焼するまでの状態のことをいう。吸気管のなかでは、まだガソリンの大部分は霧状で、気化するのは燃焼室に入ってからになる。なおガソリンと空気の比は空燃比という。(A/Fともいう)空燃比はある程度の範囲に収まっていないとパワーが出ないので、スロットルを大きく開けて空気をたくさん取り込んだときには、燃料もたくさん噴いてやる必要がある。
減衰力
路面からの衝撃を吸収するのはバネ(スプリング)の役目だけど、バネだけだと、いつまでも伸び縮みを繰り返してしまうので、揺れが収まらない。そこで、クルマのサスペンションでは、バネの揺れを収めるために、ダンパー(ショック)を使って、バネの伸び縮みの抵抗になる力を発生させている。その力のことを減衰力という。しかも減衰力は、ロールする速さやノーズダイブする速さも左右するので、ハンドリングの面でも重要な役割を果たしている。
牽引フック
車両が自走できなくなったときに、他車に引っ張ってもらえるように、ワイヤーやロープを引っかけるための輪っかまたはステー。市販車にはたいてい車体の前後についている。エアロパーツを付けると使えなくなってしまうことが多い。レーシングカーでは、使いやすい位置に後付けのものを装着する。
空気圧
文字どおり空気の圧力のことだが、クルマの場合はタイヤに入っている空気の圧力のことを指すことが多い。高すぎても低すぎても不具合が起こる。空気圧によってタイヤのグリップ力や特性が変わるので、スポーツ走行の際には細かく調整する。また、ハードな走行をするとタイヤの温度が上がって空気圧も上がる。ドリフトでは、滑りやすくするために極端に空気圧を上げることがあるほか、ドラッグスリックタイヤはタイヤをたわませてグリップさせるために、極端に低い空気圧で走る。
空燃比
混合気の中の空気と燃料の比率のことをいう。ふつうはA/F(空気の重量÷燃料の重量)で示される。空燃比は燃料噴射量で調整することができるんだけど、この数字がある程度の範囲内に収まっていないと、パワーも出せないし、エンジンが壊れる恐れもある。だから、燃料セッティングは専用の空燃比計(A/F計)をつけて空燃比をチェックしながら行うことが多い。
腰上
エンジンの部品のうち、ブロック(シリンダーブロック)を開けなくてもイジれる部分のことをいう。つまりヘッドガスケットから上。カムやバルブスプリング などが腰上のパーツだ。腰上に手を入れはじめると、ライトチューンから一歩進んだ仕様というかんじになる。
腰下 [エンジン腰下]
エンジン部品のうち、ブロックを開けないとイジれない部分のことをいう。具体的には、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、シリンダーなどだ。腰下をイジる目的は、各部品の重量などを揃えるバランス取り、高圧縮化、低圧縮化(ターボ車の場合)、排気量拡大、高ブーストに対応させるための強化パーツへの交換などがある。ちなみに、この部分に手を加えないと、エンジンフルチューンとは呼べない。
過給圧
ターボチャージャーやスーパーチャージャー付きのエンジンで、吸入された空気にかかる圧力のこと。ブースト圧ともいう。単位はkg/cm2だが、たとえば過給圧が1.0kg/cm2の際には大気の2倍の圧力がかかり圧縮され、自然吸気に比べると2倍の空気が吸入されている状態である。本来は大気圧が1kg/cm2なのだが、利便上大気を0kg/cm2として表示している。
金プロ
HKSが発売しているエンジン制御用のサブコンピューターで、
FコンVよりもグレードは高く、フルコン並みの制御ができて
細かい所までセッティング調整が可能。
電子制御ガソリンエンジンだったら、どんなエンジンでも、どんなチューニングをしていてもたいてい使えるが、FコンーV同様HKSパワーライター店という専門ショップのみで取り扱われる
鏡面加工
金属表面を磨き上げて、鏡のように反射するほど滑らかツルツルにする加工のこと。エンジン内部パーツにはいろいろな箇所にいろいろな目的で行われる。ポート内壁の場合は、吸排気の抵抗を減らすために、燃焼室内であれば、スラッジ等を付きにくくするために、コンロッド表面であれば、小さな凹凸を取り去って、そこから亀裂が生じるのを防ぐためなどに行われる。
顔面スワップ
クルマの顔、つまりフロントバンパーやヘッドライト、グリル、フロントフェンダーなどを他車種のものにつけ換えてしまうカスタム。もちろんボルトオンではできないことが多いが、鈑金やパテ埋め作業などを行えば、やってできないことはない。代表例は180SXをS13型シルビアの顔に変えてしまう“シルエイティ”。これはわりと簡単に顔面スワップできる。